
前編の記事に続き、今回も今時書店を経営する平碧仁さんにインタビュー!
後編の記事では、平さん自身についてお伺いしました!
↓前編の記事はこちらから📖↓
☑東京の大学に新幹線で通う実証実験に挑戦中!?
☑高校生の時に今時書店を立ち上げた経緯
☑経営初挑戦からの道のり
平 碧仁(タイラ アオト)

新潟県新潟市中央区・花町にある、無人キャッシュレスの古本屋「今時書店」のオーナー。
高校生のときに今時書店を立ち上げ、現在も経営を続けている。
現在は東京の大学に在籍しながら、新潟に住み続けて新幹線で通学するという“実証実験”にも挑戦中。
現在の活動について
最初に、平さんの現在のご活動を教えてください!
今は東京の大学に新幹線で通いながら、今時書店の運営を続けています。平日は大学の課題やゼミ、研究などをしつつ、新潟と東京を行き来する生活を送っています。
東京の大学に新幹線通学ですか、!?はじめて聞きました。
そうですよね。僕の周りにもそんな人はいません笑
なぜ、新幹線通学という選択をされたのでしょうか?
もともと、東京の大学に新幹線で通いたいという思いはあったんです。新潟って、人口流出が大きな課題になっているじゃないですか。中心市街地の空洞化が進む中で、僕なりに「新潟の課題を解決するために、何か実験してみたい」と思ったんです。
「新潟に住みながら東京に通う」という選択肢が、もう少し普通のことになったら面白いんじゃないかと。
実際、自治体でも通勤の新幹線定期の補助制度などは行われていて、新潟に限らずいろんな地域で取り組まれています。だけど、学生で実際にやっている人は、ほとんど周りにいないですよね。学生にとっては金額面でも高いですしね…!
ですが「新潟に残りながら関東に通うこともできる」という選択肢を示すために、新幹線通学に挑戦しています。
今時書店を始めた経緯
今時書店を始めたのは、いつ頃だったのでしょう?
僕が高校生の頃に始めました。実は、今時書店が入っているビルは、僕の祖母が所有しているビルなんです。もともとは、経理事務所として使われていました。でも、事務所の方が高齢で辞めることになって、家族でこのビルをどう活用するか考えることになったんです。
ただ、貸し物件にするのも厳しかったんですよね。築50年の古いビルで老朽化も進んでいたので、借り手が見つからない。かと言って、リフォームするにはお金がかかりすぎるし、費用の回収も見込めない。
最終的に「家族で何かに使うしかない」という結論に至りました。
でも、家族それぞれが本業があるので、常に誰かが店番をするのは難しい。そこで思いついたのが「無人営業の古本屋」です。こうして、今時書店がスタートしました。
それで、無人営業という形を選ばれたんですね!

ご家族の中でも、当時高校生だった平さんが書店の経営に挑戦された理由はありますか?
僕、もともと小学生の頃からアーチェリーをやっていまして。ありがたいことに、オリンピックの強化選手にも選んでいただいて、中学生のときには県外の強いチームから「うちに来ないか」と声をかけてもらったりして、県外の強豪校に進む予定だったんです。
ただ、ちょうどそのタイミングで病気になってしまって。入院もしなければならなくなって、進学先も寮生活だったので、「この状態でやっていくのは難しいな」と思って、続けることを諦めました。
それからは、県内でアーチェリーができる高校に進んだのですが、成績も思うように伸びず…。それまで頑張ってきたスポーツの目標がなくなってしまったんです。「これからどうしようかな」と考えていたときに、ちょうど家族からビルの活用の話が出てきて。
だったら、挑戦してみたいな、と。そんな経緯から、書店の経営に挑戦しました。
高校生で「経営に挑戦してみよう」と踏み出す一歩に勇気をもらいます…!
伝えた続けた結果が、経営の土台に
経営の力はどのように身につけられたのでしょうか?
いや、正直に言うと「身につけた」というわけではないんです…!むしろ、たくさん助けてもらった、という方が近いですね。
親から借りた開店資金300万円の中で、開店準備をする必要があったので、何でもかんでも、直接いろんな方にお話をして、そこで「こういうことをやりたい」と伝えて、賛同してもらったり、手伝ってもらったり、という積み重ねだったと思います。
実際に、建設会社の方やデザイナーの方々に助けていただきました。特に印象に残っているのは、本棚をつくってくださった家具屋さんですね。もともとは、棚や机を探しにそのお店に伺ったんです。でも、一番大事な「本棚」がなかなか見つからなくて。
希望としては、天井に届くくらいの高さがあって、いろんな人が置く、いろんなサイズの本に対応できる可変式の棚が欲しかったんです。でも、そんな自分に都合のいい既製品はどこにもなく…。
そんなとき、たまたまその家具屋さんがライフスタイルに関するセミナーを開くという案内を見つけて、思い切って参加し、セミナーの後に「実は、こんな本棚がほしいんです。」と直接相談しました。
すごい行動力ですね!
そこから本当に助けていただきました。その後、お店にも来てくださって、最終的に本棚だけじゃなく、内装もすべてご担当いただくことになったんです。
今、店内にある大きな本棚も、床材やテーブル、椅子も、倉庫に眠っていたものや長岡にあるお店から、ぴったり合うものを選んで、家具屋さんが丁寧に準備してくれました。

平さんの想いが伝わり、形になっていったんですね。
そうですね…。ただ、今思えば、当時の僕の話なんて本当に拙かったと思いますし、断られることの方が多かったです。断られる度に、心が折れかけました。
でも、どうしてもやりたくて。だから、「高校生が、無人で本屋をやりたいんです。」って、必死に話すしかなかったんです。周りからしたら「何言ってるんだろう?」って思われていたかもしれません(笑)
でも、そんな中でも、ちゃんと話を聞いてくださったり、力を貸してくださった方がいて、今があると思っています。
皆さんにとっての居場所にしたい
今後は、今時書店をどのような場所にしていきたいですか?
そうですね、皆さんにとっての居場所になれたらいいなと思っています。情報発信の場所、というとちょっと堅いんですけど、ブックオーナーさんにとっても、お客さんにとっても、ふらっと来て、ちょっと一息つけるような場所になったらいいなって。
例えば、現在店内に、骨髄バンクの普及活動をされている「にいがた骨髄バンク応援団」の副代表の方のコーナーがあります。普段は「献血ルームばんだいゆとりろ」で不定期に普及活動を行っているのですが、やはり常設で活動の拠点になる場所がなかなか無いそうです。
そこで、僕の方から「良かったら、今時書店の一角を使いませんか?」とご提案させてもらって、今はここに資料や本を置いていただいています。そうやって、この場所が少しでも誰かの役に立つと嬉しいなと思っています。
自分の「好き」を大切に
最後に、新潟の学生にメッセージをお願いします!
そうですね…!正直、一番これっていうものはないんです…!笑
でも、強いて言うなら、何か興味を持ったことがあったら、自分なりに調べたり、実際にやってみたりするのはすごく大事なのではないかなと思います。
今はSNSとかもあるので、調べようと思えばすぐに情報にアクセスできますし、そういうのもうまく活用していくのが大事だと思います。
もちろん、中にはちょっと怪しい情報や、最近で言えば闇バイトのような話もあるので、注意は必要なんですけど……。
「好きなこと」や「ちょっと気になったこと」を、もう少し深く知ろうとしたり、アクションを起こしてみたりするだけでも、すごくいいんじゃないかなと。
無理に何か大きな目標を持つというよりも、自分の「好き」を大事にしていってほしいなと思います!

編集後記
私自身、古町に行くたびに今時書店さんにお邪魔するほど大好きなお店なので、今回インタビューをすることができて本当に嬉しかったです!!
平さんの話を聞いて「伝え続けることの勇気」をひしひしと感じました。
最初からうまく話せなくても、熱意を込めて言葉にし続けることで、想いは少しずつ誰かに届いていくのだなと…!
「話す」「頼る」「一緒につくる」――そんな人との関わりのひとつひとつが、今時書店という場を育ててきたのだと知りました。
そして何より印象的だったのは、「書店をやりたい」という想いを、あきらめずに動き続ける平さんの姿です。
その強さに、私自身も背中を押していただきました。
“できるかどうか”よりも、“一歩を踏み出し続けること”。
そんな姿勢を、大切にしていきたいと思います!